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2017年6月27日 (火)

「権利」と「義務」は取引か?−自民党改憲草案12条

自民党憲法改正草案 の12条

第12条(国民の責務)
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない

は分かりにくい。

前半は現行12条と同じように見えるが、「(国民の責務)」と付け足され、全体的に国→国民という非立憲的な構造の文脈では意味が変わる可能性もあり得る。例えば、国民の自由や権利は国民が頑張って自力で守るもので国が保障するものではないのだ、という国の義務否定としても読めないことはない。とはいえ、それは脇に置いておく。

また、自民党改正草案では、現行の「公共の福祉」という言葉が「公益及び公の秩序」という言葉に置き換えられている。

自民党憲法改正草案Q&A では「公共の福祉」が分かりにくいから、と説明しているが「公共及び公の秩序」という言葉で分かりやすくなるわけではない。

ただ、Q&Aでは

憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした

とある。

Q&Aは法的拘束力はおそらくないのだろうが、改正草案の作者の考え方を表しているとみることはできる。つまり、人権の制限には人権の衝突以外の原理で行うこともあり得る、と作者は考えているのだろう。これは、大日本帝國憲法の法律の留保の復活に繋がるおそれがある。しかし、この人権の衝突以外の原理とは何だ?その根拠・正当性はどこから来るのか?

これも重大な問題だが、ここまでにしておく。

ここで問題にしたいのは

自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、

の部分だ。

日本語が分かりにくいのだが、おそらく「自由」には「責任」が伴い、「権利」には「義務」が伴う、これは当然のことである、国民はこのことを自覚しなければならない、ということだろう。102条の国民の憲法尊守義務から、自覚するのは国民なのだろう。

ところで、そもそも「権利」には「義務」が伴う、というのは本当だろうか

例えば、AさんがBさんに(無利子で)10万円貸したとする。このときAさんは「Bさんから10万円返してもらう権利」が発生し、Bさんには「Aさんに10万円返す義務」が発生する。法学では債権債務と言うらしいが、常識で考えても大体分かる。

確かに、権利と義務が同時発生しているように見えるが、その「主体」が異る。

AさんはBさんからお金を返してもらう権利があるだけで義務はない。何故、お金を貸したことで義務が発生するのか?

同じ主体が権利と義務を「必ず」伴う、という話などどこにもない。

更に、基本的人権は「人であること」から出てくる権利であって、それに伴う義務はない(人権の固有性)。

同じ主体が権利と義務が伴って発生する場合といえば、モノを買うときがある。だから伴う「場合」もある。これは取引だ。

AさんがB商店から和菓子を(税は一旦無視する)千円で買ったとする。すると、Aさんは千円を払う義務と和菓子を渡してもらう権利が出る。

しかし、よく考えると、これは債権債務の関係が2組発生していることが分かる。「Aさんが千円払う義務」と「B商店が千円もらう権利」、および「B商店がAさんに和菓子を渡す義務」と「Aさんが和菓子を受け取る権利」だ。権利と義務2つづつ、合計4つ発生している。

取引の関係で、さらに問題なのは、取引が公正に行われるか?ということだ。一般に、取引の両者の力関係が同等ならば公正になる可能性は高いが、力関係に大きな差がある場合は力のある方が得をするような不当な取引になりやすい。公正さを保つためには、不公正な取引をさせない、更なる力が必要だ(法律、裁判所、警察などなど)。

しかし、国対国民で公正な取引は保障されるだろうか?

結局、「権利」には「義務」が伴う、という話には以下のような問題があることが分かる。

  1. 基本的人権の固有性を否定、すなわち基本的人権の否定につながるおそれ。

  2. 仮に、国民の権利が義務の見返りの取引関係だったとしても、その取引の公正さを担保するものは何もない。

これでは、国が一方的に国民から搾取する構図になるおそれが非常に高いと思う。

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